モダンの呪い なぜ芸術とスポーツは接近するのか

駅伝芸術は駅伝と芸術を近接・同居させる行為です。一見それほど関係なくみえる芸術とスポーツは、近代五輪の起源をたどると、ぐぐっと深い関係にあることがわかります。

国際オリンピック委員会(IOC)によるオリンピック憲章(2016.8.2改正版を参照)の冒頭付近でオリンピズムの根本原則が謳われています。憲章の筆頭項目はこんな感じです。「オリンピズムは肉体と意志と精神のすべての資質を高め、 バランスよく結合させる生き方の哲学である。 オリンピズムはスポーツを文化、 教育と融合させ、 生き方の創造を探求するものである。 その生き方は努力する喜び、 良い模範であることの教育的価値、 社会的な責任、さらに普遍的で根本的な倫理規範の尊重を基盤とする。」 また、憲章の第1章、オリンピックムーブメントには、IOCの使命と役割のひとつとして、「スポーツと文化および教育を融合させる活動を奨励し支援する。」とあります。さらに、第5章39条には、OCOG(オリンピック組織委員会)は、「少なくともオリンピック村の開村から閉村までの期間、 文化イベントのプログラムを催すも のとする。 当該プログラムは IOC 理事会に提出し、 事前に承認を得なければならない。」のであります。 これが、オリンピアード=前のオリンピック開催から当該オリンピック大会会期中にいたるまで、主催都市を中心としてさまざまなプログラムが組まれ、予算措置される理由なのです。 ​いま東京はスポーツだけでなく文化芸術でも沸騰しちゃっているわけです。

しかし、この、スポーツと文化、教育との融合とは、そもそもどういうことなのでしょうか。​

オリンピックが現在の形になる以前、近代以降に、古代オリンピックを祖とするさまざまな大会が英国を中心に開催されます。(参考:佐山和夫『オリンピックの真実 それはクーベルタンの発案ではなかった』)​

  • コッツウォルド・オリンピックス(英・イングランド)
  • ウェンロック・オリンピアン・ゲームズ(英・イングランド)
  • シュロップシア・オリンピアン・ゲームズ(英・イングランド)
  • リバプール・オリンピック・フェスティバル(英・イングランド)
  • インターナショナル・オリンピック・フェスティバル
  • ランディドノー・オリンピック・フェスティバル(英・ウェールズ)

これらは基本的に一都市で開かれます。コッツウォルドの大会は17世紀から19世紀半ばまで断続的に開催され、ウェンロック大会は19世紀にはじまり、現在にいたるまで続く由緒あるオリンピックです。

「近代オリンピックの父」とよばれるクーベルタン男爵(仏)は、自らのオリンピック構想をすすめるにあたり、これらの大会から多くのヒントを集めたに違いない、と、ノンフィクションライターの佐山和夫さんは自著で指摘しています。特にウェンロック・オリンピアン・ゲームズを1850年に始めたウィリアム・ブルックスからは思想や競技内容、式典の次第にいたるまで、多大な影響を受けます。ウェンロックの1861年の大会(開催地:ウェリントン)では、競技種目も様々で、スポーツのみに限らず、芸術・文化の面も含めた総合的活動を積極的に打ち出していました。例えば、詩歌、絵画、裁縫、編み物、数学、歴史などなど。

クーベルタンがIOCで組織したオリンピックでも、黎明期~第2次大戦後の1948年ロンドン大会までは、スポーツ競技と芸術競技(art competitions)がありました。クーベルタン自身も芸術競技文学部門「オド・オ・スポール(Ode au Sport)『スポーツ賛歌』」で金メダルを獲得したといわれます。IOCの競技種目には、詩歌、絵画、彫刻、彫塑、裁縫、ポスター、文学全般、劇作、叙事詩、音楽全般、声楽作曲、器楽作曲、オーケストラ作曲、編み物、数学、歴史、建築設計、都市計画、などがあり、スポーツを題材とした芸術作品を制作し祭典により順位を競ったのだそうです。​

芸術とスポーツは、近代オリンピックの起源をたどると、非常に近しい関係にあることが明らかになります。芸術がモダニズムの呪縛を現代に至るまで拭いきれない(乱暴な展開ですみません)ように、スポーツも近代の桎梏から自由ではない、というのが駅伝芸術祭を開催するにあたって、駅伝芸術の発案者が提起する主張です。しかし、繰り返しになりますが、決して出走者の姿勢態度を制限するものではありません。

では、駅伝芸術は、なぜ、数あるスポーツ種目のうちの駅伝なのでしょうか。ここでもオリンピックが関係します。鍵となるのが、日本が初めてオリンピック代表選手を送り込んだ1912年のストックホルム大会に、マラソン代表として参加した金栗四三、駅伝の発案者です。金栗を考えることで初めて、前に記した「スポーツと文化、教育との融合」のうち、教育が近づいてきます。

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カテゴリー: art

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